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小金井の家

revised: 2005 / 11 / 21

「景」の断片化、マスキング、あるいはフレーミング

旗竿型敷地に建つ。アプローチはPC平板。

この住宅を特徴づけているのはランダムな市松模様ともいうべき開口部です。この検討をはじめるにあたって「窓」を単なる壁にうがたれた穴という存在から転化させられないか、ということを考えていたように思います。そして開口のパターンを市松もどきとしたことには次のような意図があります。
都市部の込み入った敷地の住宅は、周囲に対して閉じながら内部で開放的な空間を獲得しよう、という意識に向かいがちです。確かに一般的に都市部の近景は全体としてはとても見られたものではないかもしれません。しかし、その近景を断片化することによって、そこに新たな「景」を発見することができないだろうか。
つまり、この住宅では「景」を断片化することによって周囲の環境との関わりを再考することを意図したのです。これは内部から外部を眺めたときだけでなく、その逆の場合にもあてはまります。
「景」の断片化を考える上で「市松」と同様に取り組んだのが、「景」の「トリミング」、あるいは「フレーミング」だったように思います。いささか唐突にすぎるかもしれませんが、例えば現代美術家のジェームズ・タレルによるある種のインスタレーションに見られるようなアプローチです。
現場に通ううち、2階のハイサイドライトから飛行機雲を見たことは非常に印象深い「景」の一つでした。単なる飛行機雲が存在する空模様が、フレームを与えられることで別の見え方をしてくるのです。この北へ向いた高窓からはいまのところ空の景色しか眺めるものはありません。晴天、雨天、曇天に関わらず文字通り「空模様」そのまんまで、その遠近感を欠いた「景」がこの住宅において特異な存在感を放っていると言えそうです。


上階主室。様々なバリエーションの気積がゆるやかに接続されている。
Photo: Alessio Guarino